ディープインパクトの凱旋門賞

(これはmixiで書いたものを再掲したものです)
来たる2006年10月1日。
フランスはロンシャン競馬場に衝撃が走る。


今や競馬なんて全く興味ない人でも名前を知ってるディープインパクトという一頭の競走馬。
デビュー以来手綱を握り続けている現人神武豊騎手を背に、彼は彼の地で世界最高峰のレース・凱旋門賞に出走する。


グラスワンダーという自分の身も心も捧げた名馬が引退したのとほぼ時を同じくして、私が競馬に求めるものは結局のところ「馬券」がほとんどになった。


競馬にはスポーツとしての側面もある。
全身を躍動させて最後の直線を一気に追い込む馬の姿。
どこまでも速く走ろうとした結果、そのまま肉体の限界を超え、ゴールする前に自身に幕を引いてしまった馬の姿。
確かに心が動く。


ロマンを求めてもいいだろう。
初めて競馬場に行って買った馬券が当たった。
その勝った馬がとても強くなり大レースを勝ち引退。
さらにその子供が活躍していく。
終わりのないドラマを見出すことも可能だろう。


それらの良さを否定はしない。


ただしかし、そんなものは当たり馬券の魅力の前には一切が成り立たないのだ。


勝負したレースに勝つ。
この瞬間、人はそこに神を見出す。
自分が渾身の予想を繰り出したその通りに、目の前のレースの結果がおさまっていく。
その様子は当人にはまるでこの世のものではない何かに導かれるようで。
このときの感覚を何度も味わいたくて、今まで一体幾人の廃人が誕生したのだろうかw
実際は大金賭けて叫んでるから軽いトランス状態になってるだけなんだろうなwww


私は過去に数回だがその感覚を味わってしまった人間である。
だから今でも、死ぬまでに一回でも多くその体験をしたいがために毎週毎週新聞と睨めっこしているのだ。


ただそんな自分も、殊にディープインパクトの話となると、そしてそれが「サッカー日本代表がワールドカップを勝ってしまう様な奇跡的な出来事」についてとなると話は少し変わってくる。


なぜ馬券馬鹿の自分が馬券買えないところの競馬にこんなにこだわるのか。
その最大の理由は、ディープインパクトという存在の偉大さに、心底畏怖しているからなのであります。
そしてそこまで恐れ入っているのは何故か。
それは単純な彼の競走の強さに対してではない。
日本競馬史上最高と言っても過言ではないディープインパクトのここまでの戦績。
その偉業は決して彼が速いからというだけでは成し得られたものでなかったと考える。
では彼が持つ一番の武器は何なのか?


ディープインパクトは今まで6回GⅠ競走に出走し5勝を挙げている。
そして恐ろしいことに、その5回で2着した馬5頭は全てそのあと故障しているのである。
うち故障を克服していまだに現役で走っているのは2頭、つまり3頭はもう引退してしまったのだ。
さらに恐ろしいことに、実は今までディープが本番でライバルになるであろうと目されてきた馬たちは、その前哨戦でことごとく次走に向けて反動が残りそうな競馬を強いられているのである。
つまりライバルが本番で全力を出せないような流れが自然と生じてしまっているということ。
そしてさらに極めつけは、ライバルがライバルになるどころか、故障して出走すら出来なかったということが往々にしてあるということである。
今回の凱旋門賞でも、強敵になると見られていたドバイのエレクトロキューショニストが先日心臓発作で死亡するという事態が発生。
また出走できたハリケーンランシロッコにしても、前哨戦のフォア賞は直線びっしり叩き合っての決着となった。


自分の聖域に近寄るものはすべて事前に排除してしまう。
自分が勝つための最高の条件を引き寄せてきてしまう。


ディープインパクトの最強の武器はその運の良さ。
あらゆる流れを自分の元へと引き寄せてしまう傍若無人なまでの運の良さである。


今年の凱旋門賞は史上2番目の少頭数で行われる。
馬券を買うならば少頭数ほど面白くない競馬はないのだが、実力を発揮しやすくはなる。
また例年よく降るはずの大雨も今年はそれほどではないらしい。
雨でぐちゃぐちゃの馬場にならないほうがディープは走りやすい。


世界の全てを思い通りにしてしまう存在。
人はそれを神と呼んできた。
日本に生まれた神馬が今日どんな走りをフランスの地で見せてくれるのか。
ここに馬券がなくても彼の勇姿を熱く見守れる理由がある。
見たことのないものを見たい。
結局はそれなのだ。


さあ、魂に響く衝撃を見せてくれ!